わたしの名前は
オノミチコ
今日は文化祭だ
なんて言っても
親が車を出してくれる訳でもない
わたしの家は学区の外れの方にあって
40分は歩く
ミユキはさらにここから10分離れた
ところに住んでいる
こんな日ぐらい
か弱い2人の女の子の為に 学校が
ハイヤーを手配してくれても
いいのに わたしはそう思った
家と学校のちょうど中間ぐらいにある
公園まで来た
1年生の時 この公園で
片寄君と
通称「パプリカ」
ことバレー部の
高橋稔が
タイマンをした
「両雄激突」
「歴史に残る名勝負」
「今井小の狂犬 対 百合小のパプリカ」
意味が分からない
男子はどうして好きなんだろう
こういった感じの事
カンクンが特にそうだ
中学3年にして
もう英雄にされている
大塚完二 通称「カンクン」
男子は言った
「ちがう正式には メキシコ・カンクン だ
彼は我々の太陽なんだ」
…観光地じゃんそれ
それに私達は日本人だ
私は完二でカン君と呼ぶのかと
思ったが それはそんなに
関係無いらしい
幼稚園の頃から 足が早すぎる事で
男子達の崇拝の対象になり
この遺跡に雰囲気が似てる事から
メキシコのその地名になったらしい
ちなみに家はお惣菜屋さんだ
「カンクン」は
一時期
「マヤ 」
だった時もあった と
同じ百合小出身の和田さんが教えてくれた
男子にそれを聞いたら
「マヤの時代が一番早かった…」
と 遠くの雲を眺めるように言った
そのマヤは 「早」とかかっている
運動会で 大塚君がリレーのアンカーをすると
「マヤ!」
「マヤー !」
「めっちゃマヤー!」
と男子が一斉に叫んだ
クラスの
門田摩耶さんに
好意を抱いている大塚君を
からかったイジメかなんかだと
勘違いした先生が
緊急のホームルームを
開いた事もある
それも和田さんが教えてくれた
カンクンは短距離も早かったが
マラソンがずば抜けていた
カンクンは1年、2年のマラソン大会
で断トツの1位だった
「ゴールテープはカンクンの為に存在した」
これも男子が言ったった言葉だ
ミユキが「感動した !わたしもマジに
走ってみる」
そしてなかなか戻ってこなかった
心配した先生が探しに行ったら
シロツメクサで王冠を作っていた
それも友達の分まで
カンクンは最後のマラソン大会で
テニス部の月下君に負けて2位だった
月下すげえ
とは誰も
言わなかった
「3年で勝っても意味はない」
「カンクンは膝を痛めていた」
「月下は記録 カンクンは記憶」
男子は1位が好きな訳ではなく
カンクンが1位である事が好きだったん
だろう
気が着いたら公園を見ながら
ぼーっとしてた
ヤバい 遅刻する
早く行って黒板消そうと思ったのに
わたしは残り半分の道を歩き始めた
先はどうせ長いから
高橋君の「パプリカ」は
どうしてついたのか考える事にした
学校ついたら和田さん見つけて
答えを聞こう
あとがき
この10話〜14話までが
文化祭のたった1日の しかも
午前中の話だった