わたしの名前は
オノミチコ
わたしは今回芳名帳を置いた
まだ何も書かれていなかった
わたしは友人のユリコのところに
行った
ユリコは小学校の時からの
友達で おとなしい子だ
ユリコ映像部だ
映像部は上映会をしている
顧問の浅田先生が
挨拶をして3年生1人1人の上映が始まった
最初は穂木君
タイトル「しんみりのパス1」(2分)
観葉植物を晴れた日と雨の日で撮影していた
8ミリフィルムで優しい感じだった
次が神保さん
タイトル「あの頃 リサイクル」(2分)
これはモノクロだった
神保さんが昔おばあちゃんに買って貰った
ぬいぐるみと一緒に
ゴミ置場にいる映像だった
次が部長の正木君
タイトルが「残響 」(4分)
これも8ミリ
電信柱や 公園のジャングルジムの影を
チョークでなぞる
そのあと早送りになり
影がこんなにもズレる
そんな映像だった
ここまで観て わたしは
この部に入れば良かった
私の性分と合っているかも
そんな風に思ったが
次の映像がそれを軽く覆した
ハーフの三木さん 通称キャリー
タイトル「スピード キル」(29秒)デジタル
29秒で8人が蹴り倒された
ラストはキャリーさんが自分で
泥水をかぶって空港の滑走路らしき
ところを疾走した
キャリーさんはどうやって他の人と
コミュニケーションしているんだろう
そんな事を考えてしまった
そしてトリがユリコだった
タイトル「キュア パープルでごじゃる」
デジタル(8分)
完全にプリキュアだ
あれ 部長と穂木君じゃん
下級生の女子じゃ駄目だったのかな
しかも学校から1番近い公園だし
「おぬし まさか…」
やっぱりダークはキャリーさん
「あテスト 模試 受験 林間学校 自然教室
上履き 体育祭 みんなの文化祭…
私は闘う みんなの文化祭の為に!」
… 上履きが分からない
散歩のおじいちゃんいるし
でもユリコついに プリキュアになれたんだ
よかったね
みんなも手伝ってくれて
ユリコは映像部に入って本当に良かった
ここで浅田先生が挨拶した
「これで午前中の部は終わりで
午後は今と同じ物をもう一度流します
作品がみんな短いから時間が出来たので
松田さんに歌を歌ってもらおうと
思うんですがどうでしょう」
みんな拍手した
先生がドアを開け隣の部屋にいた
松田さんを呼んだ
松田 類さん
通称 猫力 (ねこじから)
彼女は映像部でも 軽音楽部でも無い
帰宅部だ
ただし歌が上手いと
去年聴いた人はみんな口を揃えて言う
私は今日が初めてだ
彼女は大勢の前で歌う
事が好きではないらしい
猫力さんが軽く自己紹介をした
話によると猫力さんは
今まで3匹の猫を飼ったらしい
1匹目がサム(オス)
2匹目がトム(オス)
3匹目がたまこ(メス)
猫力さんは初め サムキャットと名乗った
すでに使用されていた
サムが死んじゃった後にトムを飼った
当然 トムキャットにした
すでに使用されていた
タマコキャット はなぜか抵抗感があった
それぞれの猫に貰った力から
猫力にした
自己紹介が終わった
最後まで グラサンの説明は無かった
猫力さんの要望で
今上映した映像を 音源だけ消して
流しておく事になった
「サムと トムが死んじゃった時
これでもう猫を飼うのをやめよう
そう思っていたのに
私はたまこを飼いました
たまこの目線から
それを歌にしました
タイトルは
【たまこは たまたま】
聴いてください」
静かに歌が始まった
長い髪をボサボサにした
デッカいマリモ
みたいなあんたは
ひとりぼっちの あたしを
拾ってくれたね
たまたま たまたま たまたま
台風の日のキャンパス通り
コンビニの横の階段の裏
あんたはやさしい 声で
呼んでくれた
たまたま たまたま たまたま
バカみたいに熱い夏の部屋
エアコンがあたしに悪い
あんたは汗をかいて
ねむっていた
たまたま たまたま たまたま
怖い夢を見たわ 女優になって
レッドカーペットを歩くと
それはみーんな
赤い蟹になるの
たまたま たまたま たまたま
仲間を連れて来た日曜の朝
あんたはモンプチを買いに走る
無理するなよ いつも
あるやつでいいんだから
たまたま たまたま たまたま
たまたま たまたま
言っているけど
勘違いしてない?
その たま じゃ 無いわ
出掛けてしまった部屋の
あんたの林檎が剥けない
あたしの爪じゃ
たまたま たまたま たまたま
やさしいあんたは
たぶん あたしに
するのと同じ笑顔をふりまくわ
たまたま たまたま たまたま
勘違いしてない?
その たま じゃないわ
あたしは もう あなたを待てないわ
たまたま
たまたま
たまたま
たまたま
勘違いしないで
あたしは そんな たま じゃないわ
歌を聴き終わったわたしは
考えていた
やはり人を惹きつけるのは
その人のパワーなんだろうか
わたしはそのパワーがないのかな
たまこも猫力さんの
力に引き寄せられたんだろう
凹むなぁ
わたしは部室に戻り
改めて自分の絵を見て歩いた
2週した時
それが 見えた
5分くらいそれを睨んだ
窓を開けて息を吸った
遠くに猫が 1匹いた
あとがき
バレエモッシュピット という
ホワイトボードのマンガを描いていたときに
メガネのバイオレンスマザーみたいな
キャラを描いていて それが
ミチコオノ日記で キャリーになった