今週のお題「読書の秋」
私の名前はオノミチコ
中学3年の書道部だ
昨夜は遅くまで本を読んでしまった
津原泰水さんの本
「ルピナス探偵団の憂鬱」だ
あらすじは
高校時代に「ルピナス探偵団」と称して様々な謎解きに関わった三人の少女と少年一人。だが卒業から数年後に、一人が不治の病で世を去った、奇妙な謎を残して
こんな感じだ
たまらなかった
踏み留まりたいな
この物語の世界に
そう思った
しかし朝には別世界だった
台所からお母さんの歌が聞こえてきた
最近ずっと同じ歌を歌っている
ついこないだ引退を発表した人の歌だ
「ベイビードンフライ♪」
その日はお母さんの誕生日だった
お母さんは その人のファンでは
なかったが
誕生日が一緒だったと知ってから
初めてちゃんと聴いてみた(現金な人だ)
そして
ダウンロードした一曲に
ハマってずっと口ずさんでいる
「ベイビードンフライ♪」
「1人で郵便局♪」
…お母さん …それは多分ちがうよ
わたしはスマホで歌詞検索をした
やはりそうだった
一個目の【謎】は昔
書道部で解いていた
私が入部した時の書道部にも
3人の少女と1人の少年がいた
3人の女子の先輩と
1人の男子の先輩と言った方が正しい
男子の先輩が部長だった
緑 宇多丸
成績は学年トップ
愛読書は六法全書
とプロレス雑誌
要するに変態だ
女子の先輩達もそれぞれ個性的だったが
わたしは 小倉千影先輩が好きだった
「オノさん 先輩はよしてください
小倉ちゃん そう呼んでください」
この場合の ちゃんは 決して
馴れ馴れしいものではない
真逆だ 凛としているのだ
小倉ちゃんは少女戦隊物なら
色はブルーだろう
「正しき道」が口癖だった
そんな小倉ちゃんが書く言葉は
とてもオルタナティブな力を
持っていた
文化祭や 体育祭 それに部活動で
小倉ちゃんはよく書いてくれと
頼まれた
「わかりました」
そう言って6畳ぐらいの大きさの字を書いた
最後の文化祭のとき
書道部はみんな大作を書いて展示した
前日の夜 遅くまで準備に残った
わたしと小倉ちゃんは
宇多丸先輩作品を見ていた
見ると 小倉ちゃんは
ハンカチをこめかみにあてていた
「部長は卒業する私達を
渡り鳥に例えたんだわ …
もう飛ばなけれいけない
飛ばなければ道は開かれない
正しき道は 踏み出した一歩から
でも 願くば 飛びたくない
留まりたい そんな気持ちを
表したのよ
だからドンフライなの」
「… その場合 ドント じゃないですか」
「オノさん まずは発音してごらんなさい
ドントフライだと揚げ物みたいじゃない
常に美しい方を選びましょう
オノさんは美術部にも在籍しているから
いい勉強になると思うわ いい
秘すれば華 なのよ
全てを口にしない事
よく少女漫画で描く 口 分かるかしら?
小倉ちゃんは習字で書いてくれた
これで口と分かるでしょ
全てを描く必要は無いの
さらに
小倉ちゃんは習字で書いてくれた
ね こう言う事なの」
分かるようで分からない説明だった
文化祭当日 全然人が来ない部室で
部長に作品の意味を聞いた
「あ これ プロレスラーの名前」
「…え?」
「んーオノに分かるように言えば
日本の1番偉大なレスラーの引退試合の相手を
した外人のレスラー の名前」
先輩はそれから長々と説明してくれた
・こないだユーチューブで見た
・酔った親父に勧められた
・引退試合の名言(?)
・プライド(?)で活躍した
・男塾(?)
・勧めた先輩のお父さんは実はその会場にいた
真剣な顔で話す先輩を見ていたら
こんなにかっこいいのに彼女が
できない理由が少し分かった
わたしはもちろんその話を小倉ちゃんに
しなかった 秘すれば華
そう教えられていたからだ
出来た後輩だ
でもお母さんは
出れば恥 だ
お母さんは歩いてる時でも
買い物してる時でもよく歌う
歌詞検索で
2つ目の【謎】も解いたわたしは
母を正しき道に 誘導する為に
台所に向かう
わたしはそれを1人で試みる
お母さんに
歌詞検索の画面にしてあるスマホを
渡す
そのあと画像検索の画面にして
もう一度渡す
最後にこう言う
「泣かないで」
それから学校に向かった
あとがき
初めて書道部が出てきたが
2年の先輩を描き忘れている