michiko-ono's-diary

美術部 書道部の部長の日記

第18話 夕陽と鏡

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私はその日 夕陽の中に立っていた

 



 

 

 

 

その二本の足は長いこと陸上競技に使われてい
た。

 

 

常にトラックを走り抜けタイムを縮める事に情熱を使っていた。


 

「彩ー今のタイム良かったんじゃなーい?」

 





まゆこが走り終えて息を切らしている私のそばまで走ってきた。



顔をあげてマネージャーの方を向くと三本の指が立っていた。



「ほらやっぱりー三秒も縮まってるじゃんー」

さらさらの髪をゴムでくくりながらアキレス腱を
伸ばしているまゆこは、細くしなやかな身体をほぐしている。



同じ種目のまゆことはライバルといえばそうなるが彼女の行動からはそんな雰囲気はない。


お互い努力しようね、的な感じ。

独りで黙々と練習したい私からすると少しお節介な気がしているが、助言ははありがたく頂いている。


「サッカー部のナキタ知ってる?」


まゆこが今度は背筋を伸ばす運動をしながら聞いてきた。


「知らない。」


私はぶっきらぼうに聞こえない程度に答えた。
知らない事はない。



 


1年の時から私は彼の事をずっと想っていた。

「ほら見て!今ボール蹴った人よ。」


陸上部の隣のグラウンドにいるサッカー部を指差してまゆこは目でナキタを追っている。


私も座り込んで水を飲みながらそちらを見る。


「青いジャージで靴が黄色いー」

そんな丁寧な説明をしてくれなくてもわかります。


「あー あっ今倒れた!」





舌打ちしたい気分になった。



まゆこのアレが始まるからだ。


「まゆこ好きかもー」


でた。やっぱり。


すぐに人を好きになる。

もっと棘のある言い方に変えると
誰かの好きな人が欲しくなるだ。

それを叶える容姿も術も持っている
まゆこはやすやすとさらっていく。


「彩さぁ協力してくれる気なんてないわよ…ね?」

上目遣いでこちらを見て平気で頼む。
私が彼をずっと前から見ていた事を
まゆこは確認しているはずだ。

そういう事に関して勘のいい女だ。

「べつに。知らない人だし。いやだ」

 

 

シューズの紐を結び直すふりをして答えた。

「いじわるね〜彩は いいよ 自分で行くから」

言い終わらないうちにグラウンドを駆けて行った。

部活が終わり道具を片付ける為に
倉庫に向かっていると
体育館の入り口の階段の前にナキタがいた。

何度かその前を通ったら、
ナキタとまゆこが一緒に座って話していた。

 

 



ため息をつくと、
持っているハードルが重く感じられる。

それから彼らは毎日部活が終ると待ち合わせをして
そこで少し話をして一緒に家に帰るようになった。

たまに、まゆこが私に気づき わざわざ
名前を呼んで手を振ってきた。

そっちを見ないように
振りかえした手は怒りで震えてしまう。

ざわつく胸に気づかないようにして夕陽に向かって
走って家路につく。

 



 

 

 

 

 

 

 

 



 



「ほら 一番上の階…」

 





「気のせいじゃない?」


「…いや 、やっぱ 見てるよこっち」

 




「あら マジじゃん
結構話声って響くしね、ねぇ
仁ちゃん、 歩かない?スーパー行こうよ
でスーパーに着いたらアタシに財布渡してさ
好きな物買って 座って食べよ」


「 …う、うん まーいーや 餞別だしね
じゃあ行こうか」



「やった、歩きながら話すの好きー」

 


 

 


「あれ、俺なんの話を
しようとしてたっけ?…あ
あーいとこだ いとこがさ旅行好きで、
いとこっていっても一回りくらい上かな、大学の時
タイのプーケットに友達と行ったんだって」

「いーなー」

「綺麗な海で でも
3日もいたら飽きてしまう程 何もなくて
ダイビングも買い物も観光もしてしまって、その日はホテルの中をブラブラしてたんだって」

「なんかもったいないけどわかる」

「従業員さんとも仲良くなって日本語教えたり、髪をドレッドヘアーにしてもらったり、
マッサージうけたりして」

「アタシ、ドレッドしてた」


「そのうちの男の子、多分ウチらぐらいだと思う
感じの子が従業員さんといとこ達の輪のなかに入って来たんだって」

「お金くれってか」

「ううん、男の子が日本人と話すの初めてっぽくて 色々いとこ達に聞きたいのにしゃべれなかったんだって
んで手話みたいなので従業員さんに通訳してもらってたんだって」


「んで」

「肌が白いですねとか何歳ですか?とかそんな話とか、自分はホテルで働いていて、漁師もしていると話してたみたいで
そしたら急に男の子がいとこ達に海を見せたいと言ってきて、海に出掛けたんだって」

 

 


「いーねー 美少年?」


「多分ね 話してる顔にやにやしてたしね
夕方だったから 夕陽を見ながら3人で白い砂浜を歩いていて、夕陽と海がすごくよく見える綺麗な場所に着いたんだって」

「夕陽の海なら日本もそんなに変わんなくない?」


「まー日本でウチらも夕陽を見たりするけど、とにかく大きくて すぐ近くで手に取れると錯覚するような変な感じで、海も辺りが暗いのに透き通って 鮮やかな色の魚が泳いでいるのが見えるんだってさ
まー誰かが想像して描いた絵みたいって言ってた」

「ふんふん」

 




「いとこの友達は景色を見て涙を流しているし、男の子はニコニコしているだけで。そして
感動した友達は思わず、「サンキュー」と言いながら感謝の気持ちで男の子に抱きついたんだって」

 




「ウヒョーィ!」

「いてっ、! つ、つ、
もう…男の子もびっくりしてたみたいだけど、
なかなか
友達が離れないのでニコニコしてたんだけど
よく見たら
耳元で何か言ってるんだって。男の子が。」

「日本に行きます?」

「違うよ、第一 話せない。
友達は顔面蒼白になったまま 少し男の子から
離れた。
いとこは何が起きたか分からなかったが
急に男の子が抱きついてきて耳元に顔を近づけて

 

 

カナウヨ アノヒトノ ノゾミ カナウヨ って

 

 

 


 

 

 

 

声が出ていないのに 頭の中で聞こえるんだって
えっ?と男の子見たらニコニコしてるだけで、
夕陽に背を向けてた男の子が光って見えたんだって。」

「怖い話だったの?」

「どーかな、いとこはびっくりして男の子を離して友達に帰ろうと言ってホテルに帰った。
帰り道はいとこも友達も何も話さずに 静かで

 




ホテルの部屋に着いたら友達から「聞こえた?」って聞かれて
いとこは「聞こえた、でも何言ってるかわからなかった」って嘘を言ったんだって、
そしたら友達は「ある人のことを消えてしまえばいいって考えていたんだよ」って。


 

 


話はこれで終わりなんだけど
なんだろうこういうの?
空耳でしたみたいな
気もするし、違う気もするし」

 

 

 


「その男の子なんなんだろう…たまたま?
なら、叶っても、そんな願い嫌だな」

 

 


 

 

 

アタシの名前は
盾矢ミユキ
夏休みが終わって少しした頃に
夜 仁ちゃんに会った

仁ちゃんは アタシがもうじき引っ越すのを
知らなくて 話したら ビックリして
そのへんのマンションの階段で座って
話し始めたんだ

そのあとスーパーに行って
お菓子とか買って
駐車場で また
いろんな話をしたんだけど
あんまり覚えていない

仁ちゃんの暗いシルエットと
低い話し声が記憶に残ってる

仁ちゃんと私は
結局明け方まで話していた
明るくなった頃に少し2人とも
寝落ちしてしまい
起きたとき
あたしは仁ちゃんに寄りかかっていた

その時
仁ちゃんがアタシの肩に手をまわしてると
思ったんだけど

それから アタシは ソレを 見たんだ







「こら 仁ちゃん 寝ぼけてる?
駄目だよ あんまりアタシそーいった 雰囲気に
流され… え?」







「盾矢さん なに1人で寝ぼけてるの?」

「あ… ううん なんでもない
ジュース買ってくるよ 何がいい?」

「オレンジジュース」

「 仁ちゃん半分くれる?アタシそんなに
飲めないからさ」

「いいよ 」




 


 

 

 


「おはよう 日焼けしてるね 外人?」

 

 


 

 

 


「 … 日本語わかんないか?… 」

 

 



 


 



 


 

 

 


カナウヨ ノゾミ カナウヨ

 



 



 



 



 


 


 

 

 

 

 

 



「ネエ、本当にいいの?」

 

 

 

 


 


「はい … どーぞー はぁ…」

 





「智也… オマエさっきからよく
ばかばか食えんなぁ…」


「寒いし 腹減んじゃん てか なんで
食べないの?」

「… オマエ まさかとは思うが
今日なんの日で こうして集まってるか
わかってる?」

「祝日じゃん」


「… 数美の誕生日」



「え そうなんだっけ?」

「あー…終わってる、
数美が誕生日にサーティワンの
アイス全種類食べたいって言って
オッケーだしたの オマエだからな…」

「…たしかにした え?だから何?
お金俺ら4人で払うのみんなオッケー
したじゃん」

「…オマエは何にもわかってないな やっぱ
数美が31種類 ?サーティワンって31
種類あるの? まーいーや いくつあるか
知らんが それだけのアイス食べ切れると
思うか? 要は 全部ちょこっとだけ食べて
あいつ ちょこっとって言葉好きだし
あとはウチら4人が残したの全部食べるんだよ」

 



 


「げ⁈ え! …の 残せ…ば?」

「智也くーん 数美の性格一番付き合いながい
オマエが一番知ってるよなー?
小学校の時の係は?座右の銘は?」

「…飼育係 …最後まで面倒をみる…」

「そういう事だ それを踏まえた上で
オマエはオッケーしたのかと数美が少し
心配になり 最終確認をとってきたのを
先程 ここにおられる ヨリト君が
返事をしてしまった…
もう あの様子だと注文し終わったな…
小躍りしてるぞ…」

「え ⁉︎ちょ ま ? 31個 を 4人?
し は さんじゃうに
だから 1人8個⁉︎ 三個でも 微妙な量だぞ…
あれ それに 一番数美と長い付き合いなのは
ケンジだよ あれ ってケンジ来てねーじゃん
アイツ逃げた? 」

「オマエさぁー ひょっとしてゲームセンター通り
をゲームセンターってメールしてね?」

「え まって …ん はぁ スマン」


曲 さわらせて/夏バテソーラス



ふざけては いない
なめても いない
はぐらかしたり しない
どうせ ばれる ぜんぶ





返しちゃったよ
借りて いたもの
なくなっちゃったよ
もう ぼく ほとんど






ああ ぞっとする
孤独だね
夢の
おわりの
ようだね





さわってよ ねえ
いたいけど そこ

ちかづいて もっと
びびってる けど





めくってよ ねえ
やけどする けど

もしかして ひょっとして
希望でしょ これ



 

 



「アハハハハハハ なんでそうしたの⁈」

 

 




「えー やっぱ可笑しいかぁ?この頭」

「ううん手、だってその写真の
子の真似したんでしょ?


 

 

鏡なら 向きもあってんだけど
どーして見えていない腕を上で掴んでるって思ったんだろうって」


「そこかよ、想像だよ 想像 てゆーか だれ?」


「あたし?ねぇ ここ うるさいから 他行かない?」

 

 

 



 



「青ちゃん でいいね?青ケンよりまし?」

「ちゃんかよ⁈」

「わたし テン 風間テン よろしくね」

「テンちゃんか、 なんかいたなそんなの、」

「青ちゃん 、ウチこない?ゲームしようよ
夜遅くまで親帰ってこないからさ」

「いや いいけど いきなりマズいだろ、
今会ったばっかだし、男女だし、とりあえず
友人に一本メール入れていい?」

「なんて?」

「お腹痛いって」

「ハハ、好きなひとができましたって打ちなよ笑」

 



 

 

 


「… 承知の助」

 

 

 

 

 

 

 

好きな人できたら…ミチコに教えといて


 



 

 

 

 

 

 

「ハハハハハ で それって脈があるかって?」

 

 


「ない ない ない !終わり終わり !馬鹿じゃない
もう終わってんのそれ! 距離と気持ちは
おんなじ !それをいまさら気持ち悪い事
いいださないの!完全に終わり バイバイ!
ハイ終了!」

「おい…なにもそこまで 少しは
はげましてやれよ」

「だってバカなんだもん!キモいし!
妄想もいいとだし!あーやだやだ!」

「…オマエの弟だよ」

 

 

 

「アホみたいな事言ってないで勉強しなよ!
この人みたいになるよ!」

「いいんだよ 龍二はウチで働くんだし なぁ?」

「なら高校いかないでさ、
行っても無駄だし、
今から働いて、家でも建てたら
すこしは見直してやるわよ!」

「あ それ 実は俺に言ってる?」

 

 

 

 

 


 

 

 



で そのミユキちゃんは どんな男がタイプなわけ?

 

 









 

 

 


 

 


わたしの名前は ミチコオノ

ミユキがわたしに言った欲しいものは

素描の似顔絵だった

 

 


 



まともに描いたことのないわたしは
参考になる本を図書館に借りにきた
何かきっといい発見があるだろうと
ウキウキしていた なのに

 




 



図書館は休みだった…
しかたなく ロビーでやっていた
区の絵画・書道コンクールの
入選作品を見ていた

 



 


そうだ たしかに
図書館は山のてっぺんにある
図書館に来たのにやっていなかった
わたしが今日ここまでしていたことといえば

 

 




なにもそんな発見をさせなくてもいいのに
神さまの意地悪な啓示だ

 





もし神さまがいたとしたら
その神さまはわたしに性格が
少し似ていてる

 





説明を面倒くさがり
ホントは一番したいだろうことから
迂回させ続ける。

 



 


例えば
「公園で遊びながらおやつを食べたい」
みたいな願いがあると



 


「買い物を言いつけられる」
とかみたいなやり方だったりする

 



 



つまり おやつも目にするし
公園で遊んでいる他の子たちも目にする

わたしは何も
願いを言った訳じゃないのに

やはりついでに頼まれた買い物をしに
スーパーに向かうことになる



 

 

 

 

 



それから
何週間かしてまゆことナキタが交通事故に合った

 





まゆこはかすり傷だが、
ナキタが入院していると先生から聞いた。

私は夕暮れの中彼らの背中を
見ながら帰った記憶が甦った。



 


仲睦まじく手を繋ぎながら話している
彼らからはそんな恐ろしいことが
待ち受けているようには見えなかった。

まゆこはほどなくして登校してきたが
ナキタは長い間入院していた。

何も話さないまゆこにクラスのみんなは
いつしか何も聞かなくなっていった。
ナキタはどうしているだろう

友人でもない私がお見舞いに行くのは
場違いな気がして、もやもやした気持ちで
毎日を過ごしていた

中学最後の大会が近づくある日
部活が終わっても一人残って走っていた
そのとき、わたしが見たのは
グラウンドの隅にいた車イスに乗ったナキタだった

暫く彼を気にしながら走っていたが
気が散ってどうにもならないので止めた。

道具を片付ける為にナキタの横を通ると
彼はグラウンドを見ながら泣いていた。


私はその場で長い間立ち尽くした。
ナキタは私に気づくと急いで涙をぬぐった。

それを見た瞬間私の二本の足は
衝動を押さえられない程、
激しく強く意思をもって動き彼に駆け寄った。










 

 



「ねぇパパ 水に写ってるように
描くって どうやるの?」

「ああ 反対に描くんだよ 逆さまに」

「じゃあ紙ひっくり返してもいい?」

「マヤ お利口さんだなー」

「いししし わーいパパに褒められたー」

 



 


「マヤ そろそろヒカリを起こしてきてくれる?」

「はーい」

 



 

 



ガタン!
 

 

 

 


 

 





「パパ大変!! ヒカリがいないよ!」

 

 

 


 

 

 



 

 



 

 



 

 



 

 



アンタナンカキエテナクナレバイイ

 

 

 

 

 

 




 

 


「青ちゃんありがとう 楽しかった」


「うんまたな 次は勝つからなー」

 




 

 


「いい願いだけが叶うように
都合よくできてはいないだろうしね」

 

 

 



 

「アタシは片寄に好きな子ができて
ミチコはずーっと絵を続けて
くれればいいなーって思うよ

あとは仁ちゃんがアタシだけに
特別にお話聞かせてくれたらいいなって」

「なんかそれは叶っているような
感じがする願いだね 」

 



 

 


「やったぁ
アタシ当日 ダンス部で行けないからさ
今聞かせてよ」

「恋話?」

「それはいらん まったくいらん」

「あらま」

「なんか変な話をしてほしい
デタラメで無理があって バカみたいな
小さな話 アタシはそんなんが好きだし」


「… うーん
作りかけのやつでもいい?
まだしっくり来てなくて
なんか 文化祭までに啓示チックなモノが
降りてくるのまってんだよね」

「うん それが聞きたい」


「わかった じゃあ ホワイトボードないけど
なるべくわかりやすく話すからついて来てね」

「はい。わかりました」


「公園で2人の女の子がその日初めて
会いました おんなじような年頃です
すぐに打ち解けて遊びはじめました
仮に 赤子ちゃんと 青子ちゃん
んー小2ぐらい」



 


「その公園には1面が鏡の壁がありました
あとはコンクリートです …
大丈夫? 盾矢さんデカい豆腐みたいなの
浮かんでない?」

「う… うん 大丈夫大丈夫 続けて」




 

 



「それで 赤子ちゃんが あまり鏡の遊びを
知らない青子ちゃんにいろいろやってみせて
あげました」

 



 

 


「青子ちゃんはビックリしましたが
よろこんでいました」

 

 


 



「ただ赤子ちゃんは青子ちゃんにひとつ
隠し事をしていました」

 



 

 


「赤子ちゃんは じつは双子で
そっくりのもう1人がすぐ近くに
スタンバっていました 仮に赤子②」

 



 

 


「赤子ちゃんは赤子②と変わろうとしました
変わってもわからないだろうし
少ししたらまた変わればいいと」

 



 


「でも そんな時にハプニングが
起きます」

 



 

 


「赤子②が赤子ちゃんとぶつかって
赤子ちゃんが倒れてしまいました」

 

 


 

 


「当然青子ちゃんにはこう見えてます
倒れているのはまぎれもない赤子ちゃんです」

 

 



 

 



「何故か、手がで出てきます 誰の?」

 

 



 

 



「顔が出てきます 誰か他の?え!赤子ちゃ…」

 

 

 


 

 

 

 

 

「手のお化けと

 


 

 

 


赤子ちゃんの顔をしたお化けが現れます」

 

 



 

 



 

 


「青子ちゃんは気絶しました」

 


「赤子ちゃんと赤子②は
青子ちゃんに駆け寄りました」

 



 



「青子ちゃんをベンチに座らせました
すぐに気がつきました」

 

 



 

 


「そこでまた青子ちゃんに異変がおきました
実はここで起きた異変の方が大事です」

 


 

 


「まだ鏡がある 青子ちゃんは
そう思いました」

 

 


 

 



「どこからが鏡なんだろうって」

 

 

 


 



「どっちが鏡じゃない赤子ちゃんなんだろうって」

 

 



 

 

 

 

 




「マヤ ヒカリを起こしてきてくれる?」

 

 



 

 



「はーい」

 

 



 

 



 

 



 



「パパ大変!! ヒカリがいないよ!」

 

 

 

 

 



 

 

 

 



 

 

 

 

「 いるじゃん ひかりウザいからそれ」

 

 



 

 

 


「えへへへ なによ
マヤだってたまにやるじゃん」


「ママはだまされないよ もうそれ」

 

 

 

 


 

 

 

「マヤ何描いてるのマヤとひかり?」

「違うよ マヤだけだよ」

「なんだ つまんない ひかり マヤ書いたのに」

 

「どこに?」

「マヤの反対だから山 ほらね」

「ずっこいじゃん! マヤはひかり
描かないよ ひかり描くと
4人描くことになるから面倒くさい」



 

 

「4人?何それ?怖い絵?」

「内緒」

「あれ? ママは?」







「あー! ママ また片目瞑ってるー!」

「ハハハ なんでママ片目瞑るのー??」

「パパにウィンクしてるんだー!キャー」

 

 


 

 

 


 


私の二本の足は彼の前に立った。

 



 




私は彼を優しく抱きしめていた。

そして夕陽か滲んで見えなくなるまで泣いた。

 

 

 

 

 

 

 


風にあたりたくて
ベランダにでてみたら、通りの向こうの
マンションの下に
若い男女が座って話し込んでいた

 

 



 

 

 



中学生ぐらいだろうか
前にもこうしてふたつの人影をそっと遠くから長い間見つめていたそんな時期が私にもあった。

 

 



 

 


今では大人になり「そっと」「見つめる」なんて可愛らしい事してたらいつの間にか足元をすくわれて立っていられなくなる。

 

 



 

 

 


「ママー虫入るから窓閉めて。お腹空いた。」

部屋の中から声がした。

 




 


「はいはい」

 

 



 

 


窓を閉めて
柔らかいオレンジの部屋に入る。
猫や私達の家の匂いが鼻をくすぐる。

 

 



 

 


「ミチコ!」


目を合わせクスクス笑いながら
幸せな気持ちになる

 



 

 


そばで車イスの彼がこっちを見ている。

 



 

 

 



 

 

 


「ミチコはどうしてわたしにこれを見せたの?」

「わたしデッサンが描けなくて図書館に
本を借りに行ったら休みだったんです…
先輩ならデッサンについてわかるかと…」

「うーん なんだろ …違くてね
わたしね アルバイトはじめるの で
お金貯めて絵の予備校 正確には
研究所っていうんだけど そこに行って
デッサン習おうかなって
少し思ったの でももしかしたら必要なくて、
海外旅行とかの方がわたしにとっては
貴重な体験になるかもって、
そしたらミチコが素描出してきたから
わたしにはそっちなんだって
選んだ方がいいのはそっちかなって
多分 啓示なんだろうって」


「あー あ 大関先輩にとっての啓示なんだぁ
ミチコにはひどい啓示でしたよ あ!
先輩 お願い乗せて?」

 



「ふーん 承知の助」

 



 

 

 



「そこー! 2人乗り禁止ー!」

 

 

 



 

 



「アハハ 誰?」

 



「片寄君だ! ミユキの事好きな子!」





「オノさーん 聞いてー!」



 



オレ好きな子ができたんだ!

 

 

 


今度は髪の短い子だ!





盾矢に
そう伝えてくれ!」






 



「承知の助!」

 

 

 

 

 

 






~エピローグ~

 

 

 



 

 

 

 

 



 

 

 




 

 

 



夕陽には不思議な魔力があると信じている。

 

 

 



少なくとも私の人生では

 

 

 



 

 

 



二度あった

 

 

 


 

 

 



作・ナキタ アヤ